つぶやき通信 「熱が出た」

2022年2月15日

最短距離で最も良い無駄のない必要な経験を提示と私たちは言っています。
吸収する学び方をする時期の子ども達にとって、提示の中でやり直すと言うことは絶対に良くないのです。間違ったやり方を子どもが確実に見ているからです。
お部屋の中でテーブルの上にあがるとか、お部屋の中で走りまわるということをすぐに止めて下さいと先生方にお願いしています。小さければ小さいほど間違ったやり方をさせないでというのは、それが子どもの経験として脳に刻まれ子どもの内に印象として取り入れられてしまうからです。一度間違ってやってしまった事は子どもの脳の中に取り入れられ(記銘)、ねじれて混乱したものが入ってしまう可能性があるからです。このことは、保育園の生活の中でも家庭でも同じです。
私たち保育者の提示は、明確で論理的であることが必要です。私たち自身が普段の生活の中で筋道を持って筋道を通して行っていく。それが子どもだけではなく保護者にも伝わります。
今日はこうしたけど明日はこうしますでは、保護者の方も迷ってしまいます。園のルールは、こうですよと保育者自身が筋道を提示していくことが大切です。
保育園には、熱が出たらこうする、下痢や嘔吐があればこうするといったマニュアルがあります。何度の熱になったら、下痢や嘔吐があれば、保護者に連絡を入れて、こうするああするといったものです。もちろん行政の指導の中にも入っています。先生方が、園のルールにのっとって行った行動に関しては、保育園は、クラス担任の先生方を尊重します。そのことによってトラブルが発生した時には、私たちが先生達を守ります。社会の中でも同じく保育園にもルールが存在すると言うことには、それなりの経緯や理由が存在します。ある種の論理性です。保育園には保育園の秩序が存在するのですが、制限やルールといったものが結果的には、子どもや保護者、先生達を守っていくことにもなるのです。
私たち保育者という教育者がまず、考えなくてはならないこと。それは、保護者にとってではなく、子どもにとってはどうなのかということ。教育者と言われる私たちの役割や立ち位置です。私たちの優先順位は、子どもです。子どもの環境です。子どもを守ることが結果として保護者の責任も守ることになるのです。毎日の生活の中で、子どもは、いつも大人の都合を優先してくれています。穏やかに園で過ごしてはいますが、子どもも保育園で朝からがんばっているのです。元気な時は、いつも大人都合で生活が回っていっています。ですから、子どもにとっての特別な場合、病気の時は、子ども都合で保護者の方にも考えて頂きたいのです。確かに仕事や生活も大切です。しかし、この保育園の時代を生きる子どもにとって、幼い時の一瞬はいったいどんな時期なのでしょう。子どもが、子どもの時代を生きるとはどのようなことかを少しだけ、頭に置いていて頂きたいのです。それも親の責任と言うことです。
いつも大人が仕事を優先するあまり、子どもたちが大きくなったとき「大切にされなかった」という思いを一生涯持った人になってほしくないのです。
子どもが自分自身を作っている人格形成の重要な時期には、やり直しがききません。病気の時だからこそ、家族の温かいぬくもりが必要とされるのです。「家に帰ったら熱下がりましたよ」と言われることがあります。保育園がいやだからではないのです。体調が悪い子どもが家に帰って安心したのです。医療の現場で働く人は、それがどのような意味があるか十分理解していらっしゃるでしょう。身体的な事も心理的なことに大きく左右されるという事実です。
子どもは、扱われたようにしか自分自身を表現することはできません。もしかしたら、親自身が自分の親からそのように扱われたのかもしれません。そのとき小さかったあなたは、どのように感じたのですか?もし、立ち返ってそのようにされたことが傷になっているのであれば、気がついたあなたが、子どもを大切に扱って見せていってほしいのです。親自身がそれを見せることで、子どもが大人になった時に自分の子どもにそのようにしていくのです。
子どもの“熱が出た”“体調がすぐれない”困ったことですが、このことは、大切にされるとはどのようなことかを子ども自身に実体験せられる良い機会でもあるのです。もちろん、すぐに家庭で看ることができない事情もあることも知っています。ただ、このような時、親としての心構えをお伝えしているのです。
「子どもの熱が出た、仕事の段取り困ったな」このように保育園の保護者は誰でも思います。どの親も当然のことでしょう。でも、スイッチを切り替えて下さい。この大切な時期を生きる子どもと一緒にいられる良い機会だと。自分の代わりになる家族でも良いのです。
人生80年とします。そのうちのほんの数年。「三つ子の魂百まで」と言います。ほんの数年だけど長い人生を左右する特別な時期を子どもたちは生きています。「お母さんお父さん」と全幅の信頼をよせるのもたった5,6年です。熱が出るのは、またまた、そのうちのたった数回。大切にされたという思いがこの一瞬で植え付けられるかもしれないのです。いざというときに大切にされたという思いは一生の宝です。人生の困難にぶつかった時に乗り越えていけるかいけないかを決定します。熱が出た。困ったことではありますが、母と子が、家族と子が、向かい合う良い機会でもあるのです。苦いことを言っているように見えますが、親と子どもの大切なチャンスや環境を守っていくのも先生達の役割や努めなのです。ご理解ください。
園には園の秩序、制限やルールが存在します。これは、みんなが調和を持って生きることができるためのものです。